
高知・桃原の秘境に咲く神杉「牡丹スギ」|巫女伝説と天狗の霊域

🟤【秘境】樹齢1200年 桃原の牡丹杉
樹齢1200年【スギ】
熊野十二所神社(高知県大豊町)
高知県の深山にひっそりと佇む「桃原の牡丹スギ(ぼたんすぎ)」。その姿は、まるで神が手入れを施した盆栽のよう。枝葉は密に繁り、花のように丸く膨らんだ姿は“牡丹”を思わせ、杉とは思えぬ柔らかな印象を与えることからこの名で呼ばれている。樹齢はなんと推定1,200年。幹回り10.6m、樹高31mに及ぶ巨樹でありながら、今もなお樹勢は盛んだ。
この神木が立つのは、長岡郡大豊町の桃原集落。V字谷を縫うように続く山道の果て、かつて「巫女が植えた杉」と語り継がれるこの地には、熊野十二所神社が鎮座している。神社の歴史は室町時代以前に遡り、天授6年(1380年)の棟札が残されている。また「百手(ももて)」という神事的な弓射儀礼も伝わり、神と人の交信の場としての歴史の深さが感じられる。
牡丹スギの起源については、今から1200年前、都から流された17人の巫女たちが、この地に辿り着き信仰とともに木を植えたという伝説が残る。熊野信仰や山岳仏教との融合のなかで、巫女たちは織物・薬草の知識を伝え、土地に霊性を根づかせたとされる。その証のように、杉の姿は“天狗の寝床”にも喩えられ、別名「西豊永の天狗スギ」とも呼ばれている。
この神域を訪れる者は多くない。道中は車一台がやっと通れるほどの山道で、熊野十二所神社の奥に立つこの神木までの道のりは、まさに“秘境”そのもの。しかし、静寂と緑の中で目の当たりにする牡丹スギの姿は、ただの巨木ではなく“祈りの象徴”として心に深く刻まれる。
📍所在地:高知県長岡郡大豊町桃原(熊野十二所神社境内)
🚗アクセス:高知自動車道「大豊IC」から車で約30分/駐車場(7台・無料)あり
<現地説明文>
西豊永の天狗スギ(桃原のボタンスギ)
場所 長岡郡大豊町桃原能野十二所神社
樹齢 約1,200年 樹高 31m 周囲10.6m
(由来)
1,200年の昔、京都の巫女17人が捕えられ、土佐へ流された。
そのうち幾人かは、阿波から京柱峠を越えて土佐に来たが、そこで熊野権現から出た山嶽仏教と一緒になり、織物や薬草の知識をひろめ、また信仰地へ木を植えた。
このスギは、その巫女が植えたものと伝えられている。大きな枝が根元から出ていて通直な魚梁瀬スギなどとは、まったく形質を異にしたスギである。
’85国際森林年記念 昭和63年6月
高知県緑化推進委員会・大豊町
🟤ユーチューブちゃんねる{御神木マニア}@goshinbokumania より
🟤ご紹介した(牡丹スギ)のある場所

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