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徳島・春日神社の矢上の大クス──1200年を生きる神木の祈り

🟤樹齢1200年超ー神が宿る樹

推定樹齢1200年~1400年【クスノキ】
春日神社(徳島県藍住町)

徳島県藍住町に鎮座する春日神社。その境内にそびえ立つ「矢上の大クス」は、樹齢1200年超ともいわれる巨大なクスノキで、県の天然記念物にも指定されています。その姿は、ただの巨樹ではありません。幹回り約13m、かつては堂々とした主幹がそびえていましたが、火災と台風、そして人為的な枝の伐採により、現在はその多くを失い、幹には大きな空洞がぽっかりと口を開けています。しかし、それでもなお、若い枝が芽吹き、力強く葉を茂らせる姿は、「生きる力」と「再生の象徴」として、訪れる人々の心を打ちます。

その姿は江戸時代の地誌『阿波名所図会』(1811年)にも描かれ、大正期の写真にも残されており、当時からこの地を代表する名木として知られていました。かつての姿と比べると現在は半分ほどの大きさになったとも言われますが、よく目を凝らせば、かつての風格と魂は今もなお宿っています。

春日神社そのものも、奈良の春日大社との深い関わりを持ち、1203年には荘園・矢上荘の鎮守として創建されたと伝えられています。祭神は武甕槌命をはじめとする春日四神。この地には古代の皇室領・春日部屯倉(みやけ)も置かれていた歴史があり、クスノキとともに深い信仰の歴史が重ねられてきました。

幹の空洞に入り、朽ちた部分に触れると、時の流れとともに変化してきた自然と人との関わりを感じずにはいられません。かつての主幹は失われても、なお力強く生きるその姿は、私たちに「見えない力」や「祈りの継承」という深いメッセージを与えてくれるのです。

【所在地】徳島県板野郡藍住町矢上字春日 春日神社境内
【アクセス】JR高徳線「板野駅」から西へ3km/徳島バス「矢上」下車徒歩10分/高松道・板野ICから車で約2km

<現地説明文>

徳島県指定天然記念物
矢上の大クス

 指定年月日 昭和三十一年二月七日

矢上の大クスは、樹齢一二〇〇〜一四〇〇年と推定される県内で最も古いクスノキの巨樹である。幹周りは一一.九五m、高さ約一五mを測る。
文化八年(一八一一)出版の『阿波名所図会』には「矢上の大樟」として紹介されており、阿波を代表する名木として県下一円に知れ渡っていたと考えられる。
クスのある春日神社は、建仁三年(一二〇三) に奈良春日大社へ寄進して成立した荘園・矢上庄の鎮守として設けられたといわれる。

藍住町教育委員会

🟤ユーチューブちゃんねる{御神木マニア}@goshinbokumania より

🟤ご紹介した御神木(ヒノキ)のある場所

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(C)【歴史キング】×【御神木マニア】

ユーチューブちゃんねる{御神木マニア}@goshinbokumania

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