
【岡山】真庭の隠れた巨樹「観音堂のイチョウ」地を這う根と700年の生命力
🟤岡山・秘樹 根が語る古層
推定樹齢700年
【観音堂のイチョウ】岡山県真庭市
岡山県の内陸部、現在は真庭市に編入された旧勝山町の毛佐集落に、地元の人々が守り続けてきた知られざる巨樹が静かに佇んでいます。それが、真庭市指定天然記念物にも指定されている「観音堂のイチョウ」です。県道50号線から少し北に入った高台、民家の裏手にひっそりとそびえ立つその姿は、一見すると分かりづらいかもしれませんが、その圧倒的な存在感に誰もが驚かされます。
このイチョウの最も特徴的なのは、斜面に立つその樹形と、地表に顕著に露出した根の様子です。まるで無数のヘビが絡み合っているかのような、時にグロテスクにも見えるその根張りは、このイチョウがどれほどの歳月をかけてこの地にしがみつき、成長してきたかを物語っています。主幹の幹周は8.72m(環境省の報告では3本の株立ちで合計14.18m)とされていますが、斜面の下から見上げることで、その雄大さと迫力は視覚効果も相まって、まさに「ワンランク上のイチョウ」として感じられます。ゆるやかに曲線を描きながら上へと伸びる主幹の形も秀逸で、イチョウ自身の根元よりも低いところまで伸びる枝は、さらにその迫力を増幅させています。
推定樹齢は700年とされており、これは岡山県内では奈義町の「菩提寺のイチョウ」に次ぐ老樹とされています。この樹齢を重ねたイチョウは雌株であり、秋には大量の銀杏を実らせ、訪れる人々にその恵みを与えてくれます。幹には気根も見られますが、雌株としてはその数は控えめです。かつてこの場所には「別宮山八幡寺」というお寺があり、このイチョウはその山門の両脇に植えられていたものの一つと伝えられています。
都会の喧騒から離れ、里山の静けさの中で、観音堂のイチョウは700年もの長い間、この地の歴史と人々の営みを見守り続けてきました。その力強く、野性味あふれる姿は、厳しい自然環境を生き抜いてきた生命のたくましさを私たちに教えてくれます。特に、葉が落ちた時期には、猛烈な枝の茂りと、地中深くへと伸びる根の圧倒的な存在感をよりはっきりと感じることができ、生命の力強さに触れることができるでしょう。
この観音堂のイチョウを訪れ、その剥き出しの根が語りかける悠久の物語に耳を傾け、自然の神秘と生命の尊さを体感してみてください。
所在地・アクセス情報
名称:観音堂のイチョウ
所在地:岡山県真庭市後谷毛佐64
アクセス:
【車の場合】中国道・落合ICを下り、国道313号を17kmほど西へ。真庭市栗原の美川橋南詰で右折し県道84号線に入り10kmほど北上。JR姫新線を越えて県道32号につながり、そこから姫新線に沿って2.5kmほど西へ。合の坪で右折し1kmほど先の毛佐の集落に入る手前、橋の袂で路肩に駐車。案内板の横の坂道を100mほど登ると民家があり、その裏手山麓にイチョウがあります。
【公共交通機関の場合】JR姫新線・月田駅から徒歩約15分。
<現地説明文>
観音堂のいちょう
一、目通り周囲 八、八メートル
一、高さ 三五メートル
一、枝張東西二三、三メートル
南北一八、八メートル
一、推定樹齢 七〇〇年
樹勢若々しく毎年多数結実。
県下では、奈義町菩提寺のいちょうに次ぐ老樹である。
真庭市教育委員会
🟤ユーチューブちゃんねる{御神木マニア}@goshinbokumania より
🟤ご紹介した御神木(イチョウ)のある場所

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